正院川尻城(しょういんかわしりじょう)は石川県珠洲市正院町川尻にある標高34mの丘城で、比高は30m前後になります。
別名は、単純に正院城、黒滝城、稲荷山要害とも書きますが、最初の築城などは不明です。
ある程度、名が通っている城としては、能登の最北にある本格的な城跡になりすま。
平安時代末期には、珠々正院と言う地名がすでにありました。
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この正院(しょういん)と言う地名の意味からご説明申し上げたいと存じます。
弥生時代になって稲作が始まると、ヤマト朝廷は税を取るために日本各地へ進出(征服)して行きます。
例えば、鳥取県の由来としては、鳥と呼んだ原住民から、税を取ることに成功したので、鳥取だとも言われています。
このように、能登にもやってきて、税を取るようになったわけですが、日本で税と申しますと、明治に入るまで、その多くは「お米」です。
秋に収穫となった際に、税としてお米を集める訳ですが、その租稲(献上米)は、防犯のため、垣にて囲った倉庫に入れました。
この倉庫の事を「正倉」(しょうそう)と言います。
また、垣などで囲まれた家屋の事を「院」と呼んでいました。
例えば、お寺の事を寺院と言うこともありますし、現代ですと、少年院・養老院と言う言葉としても使われます。
と言う事で、税を取った倉庫があると言う事で正院だったのですが、のちにその倉庫に租稲を収納する区域全体を総称した地域名へと変化したのでした。
例えば、九州などにも、なになに院と言う地名が多く残っています。
由布院、伊集院などがよく知られますでしょうか?
ただ、川尻の場合には、川尻院と呼ばれた訳ではなく、そのまま正院と言う名前が地名となり、正院の川尻にあるので正院川尻ということになったものと存じます。
ちなみに、平安時代、税を徴収する役人側は、場合によっては、苗を農民に貸し出しもして、別途、収入を得ていまして、人々の生活はかなり厳しかったようです。
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能登の正院川尻城の話に戻しますが、戦国時代には、穴水城の長氏の一族である川尻氏(川尻長氏)が城主を務めました。
大永年間(1521年~1528年)には、棚木左門氏之の子・棚木新五連之が、主家にあたる穴水城主・長秀連の養子になったともあります。
しかし、家中で争いになったようで、長氏は庶流の長英連が権力を得ました。
そして、長連之の流れは、上杉家を頼って越後に落ち延びたようです。
その子孫になる長景連(ちょう-かげつら)が、魚津城の戦いで上杉勢に見られます。
1576年、上杉家を頼っていた長景連は、上杉謙信が七尾城を包囲した際に、正院川尻城を占領した模様です。
しかし、上杉謙信が死去すると、能登には織田勢の勢力が伸びます。
1579年、七尾城の鯵坂長実に従っていた温井景隆・三宅長盛らは、能登・甲山城を奪い、ついでに正院川尻城を攻めたため、長景連は再び越後に逃れて上杉景勝の保護を受けたとも言います。
その後、1582年、長景連(ちょう-かげつら)は、僅かな手勢にて棚木城を攻略したと言う事です。
ただし、織田信長に組していた長連龍によって攻められて、珠洲郡へ逃亡する途中、土民に討たれて討死しました。
長景連に仕えていた小林平左衛門と言う武将が、暇をもらったあと長連龍に味方し、長景連を討ち取ったとも言い、首が長連龍に届けられたともあります。
そして、川尻城に城主が入ることはなく、自然に廃城となったようです。
ちなみに、小林平左衛門は、浅井畷の戦いにて、隠岐覚左衛門・長中務・鹿島路六左衛門・八田三助・鈴木権兵衛・堀内景広・柳弥兵次・岩田新助ら前田勢の武将らと一緒に討死しています。
発掘調査の結果、曲輪、腰曲輪、土塁、横堀(空堀)、井戸、掘立柱建物跡が確認されています。
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駐車場は、漁港にある公園の無料駐車場が利用でき、そこに案内板もある模様です。
その公園から北へ道路を歩いて行くと、大通りの向こう側に、登城口がありますが、下記のように、人が通行できる狭い通路となっています。
能登のお祭りと申しますと「キリコ祭り」が各地で開催されますが、正院では、正院キリコ祭りが毎年9月14日と9月15日に開催されます。
今回、能登出張では、この日、小雨模様でした。
前日、雨が降っていなかった七尾城・小丸山城以外の能登の城は、ケガ防止のため、山城への登城を控えさせています。
・能登・崎山城 勇猛な三宅宗隆
・能登・飯田城 大伴家持も
・能登・越坂砦
・穴水城 能登にある長氏の本拠地
・上杉謙信の解説~越後の龍と呼ばれた長尾景虎・上杉景虎の人物像に迫る
・棚木城 能登の宇出津にある海城
・魚津城 上杉勢13人の武将が自刃した魚津城の戦い
・七尾城 畠山義統と畠山義総 上杉謙信との七尾城の戦い
・小丸山城 前田利家とんとん拍子の出世城
・長連龍 能登・畠山家の滅亡で一族が誅殺されても戦国を生き抜いた勇将
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