相模・津久井城とは
津久井城(つくいじょう)が続日本100名城に入らなかったのは、ちょっと残念に思いますが、東京近郊であり訪問しやすいですし、戦国時代の雰囲気もあるオススメの山城です。
標高は375m、比高180mの山城ですが遊歩道なども整備されており、意外とすんなり登れてしまいます。
神奈川県相模原市緑区にあります。
そんな津久井城を歴史的な観点も踏まえて、ご紹介したみたいと存じます。
津久井城は、小田原城の北条氏に取って、相模国の防衛上、甲斐の武田信玄侵攻に備える重要防衛地点です。
しかし、武田家も滅び、天下は豊臣秀吉へと動きだし、1590年には小田原攻めが始まります。
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このとき、豊臣勢は、小田原城を包囲しつつ、関東にある北条方の支城をひとつひとつ攻略して行きました。
津久井城には徳川勢の本多忠勝、平岩親吉、戸田忠次、鳥居元忠、松平康貞ら11000~12000が押し寄せ、津久井城を包囲しました。
しかし、北条家は、支城の防衛には、僅かな兵だけをあてており、津久井城も例外なく、主力は小田原城での籠城に加わっていた為、津久井城を守る兵はわずか150騎と記録にて見受けられます。
騎と言うのは、馬に乗る武将の数と言えます
通常、武将には3~4名の家来がついて一緒に行動しますので、農民の徴用・雑兵も含めると、津久井城にて籠城していた兵力は、全体で約500名程度と推測できます。
1590年6月23日に八王子城が皆殺しに合って落城すると、既に八王子城が落城したとの知らせが届いたと考えられます。
そして、八王子城が落城した2日後である6月25日に攻撃を受けた際に、津久井城はほとんど戦わずに降伏・開城しました。
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津久井城は城山に築かれた山城で、南北に根小屋が残っており「根小屋式城郭」の端緒・典型として有名です。
現在は、神奈川県立津久井湖城山公園となっており、城全域にハイキングコースが整備されており、スニーカーでもOKの大変登城しやすい山城でもあります。
上記の写真は、城主・内藤氏の墓がある功雲寺(こううんじ)から津久井城の山城の展望。
津久井城は比高180mですので、八王子城よりは比高が低いですが、津久井城は八王子城より登るのには体力を必要とします。
とは言え、八王子城よりはコンパクトですので、見学所要時間は1時間30分といったところで、気軽に登れる山城です。
駐車場は、津久井湖城山公園の根小屋地区(根本)に無料駐車場(8:00~19:00)が、津久井城に登るのには便利です。
圏央道・相模原ICから、車で10分位の距離です。
電車・バスの場合、JR横浜線・相模線・京王電鉄の橋本駅北口から、神奈中バスの三ケ木行(橋01系統)で「津久井湖観光センター前」下車。利用者の多い路線なのでバスの本数は多いです。
私のいつもの山城装備もご参照下さいませ。
山城は平地が狭いため、城主の館や家臣の屋敷などを山麓に置きました。これを「根小屋」と呼び、山麓に根小屋を備えた山城のことを根小屋式山城と言いますが、津久井城はそのお手本のような典型的な寝小屋式山城で、関東でも屈指です。
上記はその根小屋地区の公園入口(駐車場付近)から津久井城を見た写真です。
津久井城はこんな感じになっています。
国道413号沿い(津久井沿い)にも無料駐車場はありますが、パークセンター(津久井城の資料館)がある「根小屋」の駐車場に止めるのが最適です。
行き方・アクセスですが、下記の地図ポイント地点が、無料駐車場の場所です。
根小屋のパークセンター(入館無料)は、江戸時代に陣屋があった場所です。津久井城に関する展示もあり、上記の模型の他、甲冑・鉄砲・長槍などに実際に触って体験できる展示もあります。
パークセンターには津久井城の散策マップがありますので、必ず手に入れてから登ってください。
まずは、パークセンターから橋を渡って、斜めの道を登りはじめ「御屋敷跡」に行きます。
城主・内藤氏の館があったものと推定されていますが、内藤氏が発給した古文書が津久井には1枚も現存していない事もあり、よくわかっていません。
津久井城の本丸(頂上)部分に行くには、緩やかな坂ですが細くて、グルッと一周するような「女坂」と、ほぼ真っ直ぐに直線的に登って行く「男坂」(車坂)があります。
男坂は敵が攻め上って来ても、高所から槍や弓・鉄砲で撃退するのが容易で、津久井城には他にも竪堀が多数あります。女坂は人が1人歩ける道で細く、こちらも大人数の移動が難しく防御面でも考えられた造りになっています。
女坂はヒザへの負担を考えて下山時にいつも利用しているので、登りは男坂ですが、正直、息が切れます。
写真、すいません。左上に指が入っていました・・。
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津久井城の男坂を登れば約20分で頂上部に到達できますが、勾配は八王子城などよりもキツイので、登山用の「トレッキング・ストック」があれば、転倒防止にもなりますし、特に下る際に足の踏ん張りを大きく軽減してくれるので、個人的にはお勧めです。
男坂をずっと登って行くと、さすがに山頂部分は急峻なので、道は斜めにそれます。
約20分の距離の男坂を登りきると、山頂の尾根に到着し、上記の写真の堀切に到達します。女坂を登って来てもここに到達し、十字路の交差点となっています。
山頂の郭は左右に分かれており、西側に行けば太鼓曲輪・本丸、東側に行けば飯縄曲輪・鷹射場・狼煙台・宝ヶ池方面です。すべて尾根で繋がっています。
どっちから見ても、またこの地点に戻ってきますので、好きな方から見学してください。
上記は本丸の手前にある太鼓曲輪。
上記は太鼓曲輪と本丸曲輪の間の堀切です。写真だと堀切や竪堀はわかりにいくのですが・・。
この堀切部分はに「引橋」(曳橋)が掛けられていたと考えられています。
八王子城・津久井城・山中城・滝山城など北条家の城の多くには、引橋があります。
有事の際には、橋を引いたり、板を外したりして、敵が渡れないようにしました。
この上の開けた場所が「本丸」になります。
本丸の周りには土塁もあり、かなりの防御陣形です。ただ、ここまで攻め込まれたら、負けです。
遠景の写真は、武田信玄が三増峠の戦いから、甲斐方面を目指して越えた韮尾根方面です。津久井城の本城曲輪部分から、ハッキリ見えますので、昼まであれば部隊の移動はわかったでしょう。
山頂の本丸に江戸時代に建てられた碑です。
寛政の改革を行った老中・松平定信が書いた文字を彫るなど、当時の著名人が携わったのですが、もう、薄くて良く読めません。
さて、元きた道を戻り、飯縄曲輪に行きました。上記の階段を上ると・・
飯縄曲輪にある飯縄神社(いずな)となります。津久井城だけでなく、結構、他に城にも飯縄神社あります。
飯縄権現が祀られており、飯縄権現は不動明王が変化した姿といわれる「軍神」。すなわち、津久井城の守護神となります。
上記は飯縄曲輪から1段下がった曲輪からの見た、相模原方面です。空気が澄んでいれば、横浜ランドマークタワーも見えます。
津久井城の見どころの1つでもある「宝ヶ池」。小さな池ですが、ピークの飯縄曲輪から約10m下がったところにあります。こんな山頂付近で、現在でも水が枯れることがないので、貴重な水源の1つだったのでしょう。
少し離れていますが、もう1箇所のピーク「鷹射場」の曲輪を目指す途中にある堀切です。
安全の為にクサリが設けられている箇所も通りますが、クサリも定期点検していますし、お子様連れでもそんなに危険はありません。
「鷹射場」の曲輪です。
恐らく、弓矢の羽に使う為、鷹を取っていたと言うのが由来かもしれませんが、津久井城東側での最重要防御地点です。
遠景はJR相模原駅方面を撮影したものです。眼下には相模川も望め、空気が澄んでいれば、東京スカイツリーも見えます。
上記は飯縄曲輪の下にある大杉です。戦国時代からずっとあり、遠くからでも分かった為、津久井城のシンボルとなっていましたが、2013年8月11日の午後14:50頃、大杉に雷が落ちまして出火し、無残な姿になってしまいました。
さて、帰りは、最初に尾根部分に到達した四差路に戻り、足への負担を考え女坂から下山します。
上記は、コイジと呼ばれる付近から、子供たちが喜ぶアスレスチックや大型遊具・滑り台がある「四季の広場」に至る途中から見える大きな沢です。
江戸時代の事ですが、陣屋の「牢屋」をここに設けていたとされます。
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パークセンターまで戻って、約90分の行程でした。女坂を行きも帰りも利用すると2時間は見た方が良いです。
麓のパークセンターなどでしかジュース買えませんので、気温が高い日は熱中症にならないよう飲料水も持参願います。
おまけとして功雲寺(こううんじ)の現在の本堂写真です。
かつては、津久井城主・内藤左近将監景定(内藤景定)が庇護した大寺院で、本堂裏に、1534年に亡くなったとされる内藤景定の墓があります。
津久井城から車で約3分の距離ですので、お時間があればどうぞ。無料駐車場も境内にあります。
また、津久井城の小倉地区からは、旧石器時代である約2万3000年前の住居跡が4基発見されており、正式に認められれば、田名向原遺跡や大阪府藤井寺市のはさみ山遺跡と並ぶ事例で日本最古の部類の住居跡となります。
ただ、残念ながら圏央道の建設現場だった為、発掘調査は行われましたが、遺跡などは残されないかもしれません。
下記は津久井湖側から見た津久井城。
以上、ご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
※この記事は戦国武将列伝の記事をまとめたものです。
・奥牧野城 奥牧野城山 牧野の戦い
・相模・田代城 内藤秀勝が築城したか?
・伏馬田城(尾崎城) 尾崎掃部助の本拠
・訪問しておきたい神奈川県の城郭・寺院・古戦場など一覧リスト
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