冠山城(かんむりやま-じょう)は、岡山県岡山市下足守にある標高40mの平山城(丘城)です。
独立した丘になっています。
最初の築城は不明ですが、築城したのは河津左衛門尉氏明、または守福寺某とも言われます。
河津氏明は、高家の一族で足利将軍の筆頭重臣(執事)・高師直を補佐していました。
守福寺某というのは、守福寺が名字で、某(ぼう)と言うのは、下の名前が不明と言うことになります。
守福寺(ほうふくじ)と言うのは、戦国時代まで、広大な寺領を有していた総社の宝福寺(ほうふくじ)と考えられます。
末寺が300もある本格的な禅寺で、雪舟が少年のころ修行を行った寺としても知られます。
1575年、備中動乱で戦火にあい宝福寺は消失しました。
その宝福寺の僧侶が、大名に協力するため、冠山城を築いた可能性があると言うことになります。
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だいたい、このように2説ある場合、城を築いたのは両人のどちらかで、どちらかはあとかに城主になったとも言えます。
冠山城の場合には、高師直の忠臣・河津氏明が足利尊氏を助けるため、なんらかの形で関与し、一時的に、ここに城を構えたのかも知れません。
そのあと、戦国時代となると、守福寺某が守備したのでしょう。
織田家の羽柴秀吉が毛利攻めする頃には、宮路山城・冠山城・備中高松城・加茂城・日幡城・松島城・庭瀬城が「境目七城」として防備が強化されました。
そして、1582年、備中高松城攻めの前哨戦として冠山城の戦いとなります。
1582年4月17日、織田勢2万、宇喜多勢1万が冠山城を包囲して、下足守の山や谷は陣馬で溢れたと言います。
冠山城主として指揮を取っていたのは清水宗治の一党である林重真(林三郎左衛門)で、正室は清水宗治の娘となります。
他の毛利勢としては、祢屋七郎兵衛、松田左衛門尉、鳥越左兵衛、三村三郎兵衛、竹井将監(早島城主)、舟木與五郎、難波惣四郎、岩田多郎兵衛、権寂和尚、祢屋與七郎、佐野和泉守、守屋新之丞、祢屋孫一郎、庄九郎、秋山新四郎などの名が見受けられます。
兵数は300騎、合計3600名だったとされますので、城の規模からすると、結構「満員」と言う感じです。
願えれば備中半国を与えると言う話を林三郎左衛門は断ったともされ、毛利家に忠義を貫きました。
羽柴秀吉の親類でもある杉原家次(杉原七朗左衛門)、宇喜多忠家ら8000が攻めましたが緒戦は善戦した模様で、宇喜多勢は予想をはるかに超える犠牲者を出しました。
しかし、4月25日になって、城内から出火し、たちまち燃え広がって冠山城は混乱に陥ったとあります。
伊賀忍者が火を付けたと言う話もありますが、杉原家次が策を講じて、鉄砲の火縄をあちこちの柴垣に掛けたともされます。
そして、林三郎左衛門は南大手の櫓で自刃(享年51)し、竹井将監、鳥越左兵衛、秋山新四郎、舟木與五郎、難波惣四郎、権寂和尚など139名は自刃または突撃して討死したと言います。
このとき、一番乗りを果たしたのは、竹井将監を討ち取ったあの加藤清正となりますが、まだ21歳の若さでした。
加藤清正は北側から攻め込んだようです。
竹本幸之助は藤堂高虎に討ち取られました。
一連における備中高松城の戦いにおける唯一の激戦で、林重真(はやし-しげさね)の首は織田信長のもとに送られたともあります。
ほぼ同じ頃、羽柴秀吉は宮路山城を攻めていますが、冠山城が落城した1週間後に宮路山城は降伏しています。
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ちなみに、林重真の子・林宗重(はやし-むねしげ)は、城を脱出したようで、禰屋久秀、松田盛明、三村親宣らと備中・高松城に逃れた模様です。
その備中高松城も水攻めにて落城したあとは、小早川隆景に仕えましたが、1586年の九州攻めの際に、筑前国にて討死したとあります。
さて、羽柴勢が落とした冠山城には、花房助兵衛・長船・福田ら宇喜多家の武将が入りました。
しかし、小早川隆景の家臣・楢崎忠元が激しく攻めたため、破損していた冠山城では防ぎきれないと宇喜多勢は退却したと言います。
また、林重真の正室である清水宗治の娘ですが、落城後の消息は不明です。
しかし、真備町に代々の墓があり、子孫もいたようでして、落城後は清水家と共に小早川隆景に保護されたとも考えられます。
今回、時間がなく登りはしませんでしたが、東側から遊歩道(登城口)があり、比較的登りやすいようです。
JR吉備線「足守駅」より徒歩約30分で、見学所要時間15分といった規模です。
駐車場はありません。
備中高松城の戦い 備中高松城の水攻めの史跡なども別途ご紹介させて頂いております。
・備中高松城の戦い 備中高松城の水攻めの史跡など
・備中松山城~雲海に浮かぶ天守の幻想的な姿を見たい
・宮路山城 備中高松城攻めの前哨戦で降伏した山城
・日幡城 羽柴勢に奪われるも奪還した毛利家の意地
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